一般社団法人健康マネジメント協会

運転者教育はしっかりできていますか?
運転者に対する一般的な指導及び監督について

今後の監査や指導は「運転者教育」に軸足を移していくと思われます。国交省の指導監督指針では、毎年教育計画を作成し、必須項目について教育を実施し、それを記録しなければなりません。こんなことは常識だと軽視せず、運転者の脳裏に刷り込んでください。

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1.国交省が定める必須指導項目

運転者が安全運転に必要な技術や知識を習得するため、事業者や運行管理者は運転者に対し運転者教育を実施しなければいけません。 国交省ではその際指導すべき事項を指導項目として業種別に定め、事業者が毎年度、全ての項目を指導・教育するよう求めています。

バスの指導項目

トラックの指導項目

タクシーの指導項目

2.公開マニュアルを使って指導

各項目について具体的に何を指導すればよいかは、国交省の「一般的な指導および監査の実施マニュアル」に掲載されています。 指導をする際はこのマニュアルを使って行いましょう。

一般的な指導及び監督の実施マニュアル
バス 概要 本編 ドラレコ
トラック 概要 本編
タクシー 概要 本編

(国交省HP「運転者に対する教育」より)

3.教育計画と実施記録は必ず作成

教育計画

年度のはじめに教育計画を作成します。必ず国交省が挙げた必須項目を入れてください。スケジュールの立て方は、毎月1回定期的に実施する、時間のある時期にまとめて実施するなど、業務形態に合わせて作成しましょう。指導方法は、個人指導や集団指導があります。

教育計画のサンプル(.xlsx)

実施記録

教育を実施した際は、以下の内容を記録し、営業所で三年間保存しなければなりません。教育の記録を残さないと実施不履行とみなされます。ご注意ください。

実施記録簿のサンプル(.xlsx)

4.必須項目の概要(バス編)

(1) バスを運転する心構え

バス事業は公共交通機関として社会的に重要な役割を担っている一方で、ひとたび事故を起こすと社会に大きな影響を与えます。そのことを認識し、プロドライバーとして安全運転をより一層心がけるよう指導するほか、安全運転のための心構えとして何が必要かを確認しましょう。

(2) バスの運行の安全、乗客の安全を確保するために遵守すべきこと

旅客自動車運送事業に係る法令は「道路運送法」や「旅客自動車運送事業運輸規則」があり、また自動車の運転に係る法令は「道路交通法」などがあります。ここから点呼や日常点検、運転中のスマートフォンの使用禁止など、運転手が遵守すべき事項について確認しましょう。
そして、交通事故・違反を引き起こすと刑事処分・行政処分が科されます。本人や会社に対する処分はどんなものがあるかを確認するとともに、事故が被害者や、その遺族、加害者自身、加害者の家族など多くの人の人生に影響を与えることを認識しましょう。

(3) バスの構造上の特性

バスの構造上の特性として、車高が高い、車長が長い、車幅が広い、死角が大きい、車体重量が大きいなどが挙げられます。車長が長いため曲がるときにバイクや歩行者を巻き込む可能性がある、重量が大きいためスピードを出しすぎると事故の衝撃力が大きくなるなどの危険性から、バスの特性に応じた運転が必要であることを確認しましょう。また、バスは利用目的や地域に合わせて多様化しています。狭い住宅地を走る小型のコミュニティバス、ラッシュ時の連節バスなど、種類によって車長や車幅が異なるため運転にあたっては十分な注意が必要であることを確認しましょう。

(4) 乗車中の乗客の安全を確保するために留意すべき事項

路線バスなど乗客が立って乗ることがある場合は、転倒事故防止のために急発進・急加減速などを行わないよう心がけ、走行時は乗客が席を立たないよう呼びかけましょう。高速バスなどのシートベルトがある車両では、事故の被害を軽減させるためにシートベルトの着用を徹底させましょう。その他にも、カーブでの追い越しはしない、法定速度を守る、十分な車間距離を持つなどの乗客の安全を守るために気をつける事項について確認しましょう。

(5) 乗客が乗降するときの安全を確保するために留意すべき事項

乗客が乗降する時は、バスの急停車による車内での転倒や、運転者の確認不足によるドアへの挟み込みなどの危険があります。滑らかな発進・停止を心がける、ドアを開閉する際は二輪車・原付が来ていないか、乗客が確実に乗降したかを確認するなど、乗客が安全に乗降するための注意事項を確認しましょう。また、高齢者、車椅子使用者、障害者、ベビーカー利用者など利用者に応じた安全確保の方法について確認しましょう。

(6) 運行路線・経路における道路及び交通の状況

運行経路の工事状況等の道路情報、交通規制等の交通情報、気象状況、所要時間の目安などの情報を事前に把握し、準備及び最適な経路を選択することで、無理のない運行と安全確保につながります。また、ヒヤリハットに遭遇した危険場所についての情報を共有することも効果があります。実際の運行経路におけるこれらの事前情報を共有し、こうした場所を避ける、走行する際は十分注意するといった対応をとるようにしましょう。

(7) 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法

運転者は周囲の状況に気を配り、危険を予測して運転する必要があります。子供や高齢者、自転車、二輪車・原付などの注意点や、雨や雪、霧、強風などの気象状況において気をつける点を確認しましょう。いくつかの運転状況を例として危険予知訓練をおこない、どんな危険があるか、どうすれば危険を回避できるかなどを話し合いましょう。そして、実際に事故や車両故障、自然災害が発生した際はどのような対応をとればよいのか確認しましょう。

(8) 運転者の運転適性に応じた安全運転

運転者適性診断によって、自分自身では気付きづらい運転のくせを知ることができます。適性診断結果等を元に、個々の運転者に自分の運転のくせを自覚させ、事故を起こさないためにはどうすればよいかのアドバイスをしましょう。

(9) 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因とこれらへの対処方法

過労や睡眠不足、飲酒、あせる気持ちなど、さまざま生理的・心理的要因が事故を引き起こします。十分な睡眠をとる、よそ見をしないなど、事故を防ぐためには何に気をつけたらよいかを確認しましょう。また、過労防止のための規程や飲酒運転や薬物使用における罰則について理解しましょう。

(10) 健康管理の重要性

バス運転者は不規則な業務形態から生活習慣病になる人が多く、それによって引き起こされる脳卒中、心筋梗塞が原因の事故も増えています。健康診断やストレスチェックなどを受けることの重要性を確認し、プロの運転者として規則正しい生活を心がけ、健康を管理していくことの大切さを理解しましょう。

(11) 安全性の向上を図るための装置を備えるバスの適切な運転方法

運転支援装置の性能の誤解や過信が原因の、脇見運転や居眠り運転で事故が発生しています。衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置等の運転支援装置の特徴や性能、使いかたを十分に理解し、運転支援装置に頼り過ぎた運転にならないようにしましょう。

(12) ドライブレコーダーの記録を利用した運転者の運転特性に応じた安全運転
(13) ドライブレコーダーの記録を活用したヒヤリ・ハット体験等の社内共有

事故、運転に関する苦情、運転者からのヒヤリハットの報告があった場合は、ドラレコの記録を確認し、運転者と一緒に原因や再発防止策を考えるなどの適切な指導を行いましょう。また、これらの映像を社内で共有し、上記1~11の指導で使うなどして活用しましょう。